2024年6月2日日曜日

脂肪肝ってどんな病気? 当院での対策と治療

 脂肪肝(しぼうかん)は、肝臓の細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。正常な肝臓にも少量の脂肪が含まれていますが、脂肪肝ではその量が5%以上に増加します。脂肪肝は大きく分けて以下の2種類に分類されます。

1. 非アルコール性脂肪肝(NAFLD: Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)

以前は肝臓が悪くなる大きな原因としてアルコールの過剰摂取が問題でしたが、最近はアルコールが原因ではない脂肪肝が増加しています。これを専門用語では非アルコール性脂肪肝とよんでいます。これは主に以下の要因によって引き起こされます。

  • 肥満
  • 糖尿病
  • 高脂血症(脂質異常症)
  • 高血圧
  • 不健康な食生活
  • 運動不足

この非アルコール性脂肪肝の一部の患者さんは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: Non-Alcoholic Steatohepatitis)となり、炎症や肝細胞の損傷が伴うことがあります。このNASHは肝硬変や肝がんに進行するリスクが高くなるため、この状態に至っていないかを定期的に調べることが必要です。

2. アルコール性脂肪肝

大量のアルコール摂取が原因で起こる脂肪肝です。アルコールの過剰摂取は肝臓での脂肪の代謝を妨げ、脂肪の蓄積を促進します。アルコール性脂肪肝は、アルコール性肝炎や肝硬変に進行することがあります。

症状

脂肪肝の初期段階では多くの場合、症状はほとんどありません。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 疲労感
  • 右上腹部の不快感や痛み
  • 肝臓の腫大

診断

脂肪肝は以下の方法で診断されます。

  • 血液検査: 肝機能の指標(AST、ALT、γ-GTPなど)の異常をチェック。健診ではほぼ必ず測定される項目です。日本肝臓学会では、このうち特にALT(GPTと同じ)が30をこえた場合、かかりつけ医に相談するよう呼びかけています。また、血液の中で出血をとめる成分である血小板数が20万以下になる場合もNASHを疑う所見であるとされています。
  • 画像診断: 超音波検査、CTスキャン、MRIで肝臓の脂肪の蓄積を確認。当院で施行できるのは超音波検査です。
  • 肝生検: 病気が進行してNASHの状態が疑われる状態では、専門医を受診し、必要に応じて肝臓の組織を採取し、顕微鏡で詳細を確認する必要があります。

治療

脂肪肝の治療は、主に生活習慣の改善に焦点を当てています。適切な食事、定期的な運動、体重管理、アルコール摂取の制限が重要です。必要に応じて、糖尿病や高脂血症などの基礎疾患に対する薬物療法が行われますが、直接的に脂肪肝を改善する薬剤などはまだないのが現状です。

予防

脂肪肝の予防には、健康的な生活習慣が不可欠です。バランスの取れた食事、定期的な運動、適正体重の維持、アルコールの適量摂取などが大切です。当院では、当院で通院治療をされている患者さんに定期的に体組成計での検査を施行し、脂肪肝と比較的連動する可能性の高い内臓脂肪の測定を行い、注意をうながしています。

脂肪肝は進行すると重篤な肝疾患に繋がる可能性があるため、早期発見と適切な対策が重要です。定期的な健康診断を受け、異常が見つかった場合は医師と相談して対策を講じることが大切です。

当院での対策と治療

当院院長は肝臓の専門家ではありませんが、かかりつけ医として多くの体重や内臓脂肪の増加、血液検査での肝臓の数値異常の患者さんを診察しています。このため現在は、体組成計を用いた内臓脂肪測定で予防を促すとともに、血液検査異常を認める患者さんには専門知識をもった超音波検査技師による腹部超音波検査を施行し脂肪肝の状態を評価しています。基本的には原因となる基礎疾患の治療を行うとともに、管理栄養士による栄養指導なども行っています。また超音波検査の結果、NASHの疑いのある患者さんは専門医に紹介しています。

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